不安を消そうとすると余計に苦しくなる話

働き方と不安

はじめに:不安をなくしたいと思うのは自然なこと

不安を感じているとき、多くの人はまず「この不安をどうにかしたい」と考えます。
早く落ち着きたい。
考えすぎている状態から抜けたい。
できれば、不安のない状態に戻りたい。

そう思うのは、とても自然なことです。
不安は心地いい感覚ではありませんし、長く続くほど疲れてしまいます。

でも、不安を消そうとすればするほど、
かえって苦しくなっているように感じたことはないでしょうか。
気にしないようにしようとしても、余計に気になってしまう。
前向きに考えようとするほど、心が追いつかない。

ここでは、「不安を消そうとすること」が、なぜ苦しさにつながりやすいのかを、
少し整理しながら考えていきます。


悩みの正体を分解する:不安は「異物」ではない

不安を消そうとしてしまう背景には、
「不安=よくないもの」「早くなくすべきもの」
という前提があります。

でも、不安は突然現れた異物ではありません。
多くの場合、
・先が見えない
・判断を一人で抱えている
・失敗したときの影響を想像している

こうした状況への、自然な反応です。

不安は、怠けているからでも、弱いからでもなく、
「ちゃんと考えている」からこそ生まれます。

それを無理に消そうとすると、
「不安を感じている自分はダメだ」
「この状態を早く終わらせなきゃ」
という二重のプレッシャーが生まれます。

最初は不安だけだったのに、
その不安を消せない自分を責める苦しさが重なっていく。
これが、不安を消そうとしたときに起こりやすい構造です。


考え方・視点の整理:不安を敵にしない

ここで一つ、視点をずらしてみます。
不安を「排除する対象」ではなく、
「今の状態を知らせるサイン」として扱ってみる、という考え方です。

不安があるということは、
・何かが大事だと感じている
・慎重になりたい場面にいる
・確認が必要だと気づいている

そんな状態にいる可能性があります。

不安を消そうとする代わりに、
「今、何が引っかかっているのか」
「具体的に怖がっているのはどこか」
を、ぼんやりでもいいので見てみる。

判断軸としては、
・この不安は、今すぐ行動を止めるほど強いか
・それとも、考えながら進める範囲か

この問いを挟むだけで、不安との距離感は変わります。

不安をゼロにしなくてもいい。
少し横に置ければ、それで十分なことも多いのです。


一般化された具体例:不安を消そうとして疲れていた人の話

ある人は、不安を感じるたびに、
「もっと前向きに考えなきゃ」と自分に言い聞かせていました。

将来のことが心配になると、
成功している人の言葉を探したり、
ポジティブな考え方を無理に当てはめたり。

最初は少し楽になる気がしました。
でもしばらくすると、
「前向きになれない自分」に落ち込むようになったそうです。

そこで、この人はやり方を変えました。
不安を消す代わりに、
・今日は不安がある日だと認める
・不安が強い日は、大きな判断をしない
・不安を感じた理由を一行だけ書く

不安はなくなりませんでした。
でも、「不安を消さなきゃ」という力みが抜けたことで、
以前より疲れにくくなったと言います。

不安があっても、仕事は続けられた。
その事実が、少し安心につながったそうです。


まとめ:行動は1mmだけ。無理に前向きにしない

不安を消そうとすると、
不安そのものよりも、苦しさが増えてしまうことがあります。

不安は、排除すべき欠陥ではありません。
今の状態を知らせる反応の一つです。

無理に前向きにならなくていい。
落ち着こうとしなくてもいい。

できることは、1mmで十分です。
・今日は不安があると認める
・判断を一つ先送りにする
・不安を感じたまま、手を動かす

それだけでも、状況は壊れません。

不安は、消すものではなく、
少しずつ扱い方を覚えていくものなのかもしれません。

この文章が、
「不安があっても、このままでいい」と思える余白を残せたなら、
それで十分です。

このテーマについては、こちらで整理しています

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