はじめに:動けないのは、何かがおかしいからじゃない
やるべきことは分かっている。
時間も、環境も、最低限はそろっている。
それなのに、なぜか手が動かない。考え始めると余計に重くなって、気づけば一日が終わっている。
そんな状態に陥ると、「自分は怠けているんじゃないか」「気合が足りないのかもしれない」と、自分を責めたくなるかもしれません。でも、まず伝えたいのは、動けなくなること自体は、とても自然な反応だということです。
人は常に一定のリズムで動けるわけではありません。心や頭の中で、何かが絡まっているとき、身体は正直に「今はそのまま進めない」と教えてくれます。
無理に押し出そうとする前に、一度立ち止まって、状況を整理してみる。そのための視点を、ここでは静かに並べてみたいと思います。
悩みの正体を分解する:性格でも努力不足でもない
動けない状態を「意志の弱さ」や「性格の問題」として捉えてしまうと、解決はどんどん遠ざかります。なぜなら、それは直そうとしてもすぐには変えられないものだからです。
多くの場合、動けなくなる背景には、次のような要素が重なっています。
- やることが多すぎて、全体像がぼやけている
- 失敗したときの影響を大きく想像しすぎている
- 「ちゃんとやらなきゃ」という基準が高くなりすぎている
これらは能力の問題ではありません。むしろ、真面目に考えているからこそ起きやすい状態です。
頭の中が渋滞しているだけなのに、「自分がおかしい」と感じてしまう。その誤解が、さらに動きを止めてしまいます。
だからこそ、まずは「自分を評価する」のを一旦やめて、「今、何が絡まっているのか」を見ていくことが大切になります。
整理すべき3つのこと①:本当に“今”やることか
最初に整理したいのは、「それは本当に今やる必要があるのか」という視点です。
頭の中では「やらなきゃ」と感じていても、実は
- 期限が少し先
- 他のことを優先しても問題ない
- 今日でなくても進められる
というケースは少なくありません。
「やるべき」という言葉は、とても曖昧です。
それが「今すぐ」なのか、「いつか」なのかを分けるだけで、心の圧はかなり変わります。
今やらなくていいものを、今やろうとして苦しくなっていないか。
この確認は、行動そのものより先にやっていい整理です。
整理すべき3つのこと②:失敗したら何が起きるのか
次に見るのは、「もし失敗したらどうなるか」です。
ここで大切なのは、ポジティブに考えることではありません。具体的に、小さく考えることです。
動けないとき、失敗のイメージはだいたい曖昧で、しかも大きく膨らんでいます。
評価が下がる、信頼を失う、取り返しがつかない。
でも一つひとつ分解してみると、多くは「少し困る」「調整が必要になる」程度だったりします。
失敗を避けたい気持ちは自然です。ただ、その恐れが実態以上に膨らんでいないか、一度言葉にしてみる。
紙に書き出す必要はありません。頭の中で「最悪でも何が起きる?」と問いかけるだけで、少し現実に戻れます。
整理すべき3つのこと③:最初の一歩が大きすぎないか
最後に確認したいのは、「最初の一歩を大きく設定しすぎていないか」という点です。
「やる」と決めた瞬間に、
完璧に仕上げる
最後まで一気に進める
成果を出す
そんなゴールまで無意識に含めていないでしょうか。
それでは、身体が動かなくなるのも無理はありません。
本当の最初の一歩は、もっと地味で構いません。
資料を開くだけ
タイトルだけ書く
5分だけ触る
それで何かが劇的に変わらなくてもいい。
動くための行動ではなく、止まり続けないための行動として考えてみると、ハードルは下がります。
一般化された具体例:途中にいる人の話
例えば、ある人は転職を考えながら、書類作成が進まずにいました。
「どうせ出すなら完璧にしたい」「変な会社に当たったらどうしよう」
そんな思いが重なって、PCを開くことすら避ける日が続いていました。
ある日、その人は「今日は履歴書を完成させる」という目標をやめて、「フォーマットを眺めるだけ」にしました。
何も進んでいないようで、でも翌日、自然と一文だけ書けたそうです。
大きな決断をしたわけではありません。
ただ、整理の仕方を変えただけでした。
まとめ:行動は1mmでいい。前向きにならなくてもいい
動けないときに必要なのは、気合でもポジティブ思考でもありません。
状況を少しだけ整理して、動けない理由を自分の外に置いてみることです。
- 今やる必要があるか
- 失敗の実態は何か
- 最初の一歩が大きすぎないか
この3つを見直すだけで、止まっていた状態に、わずかな隙間が生まれます。
その隙間に、1mm分の行動が入れば十分です。
前向きになれなくてもいい。
自信がなくてもいい。
止まり続けるより、ほんの少し形を変える。
それだけで、今日はもう十分やったと言っていいのだと思います。
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