はじめに：動けない自分を責めてしまうときに
「やらなきゃいけないことは分かっているのに、どうしても手が動かない」
そんな感覚を抱えたことがある人は、きっと少なくありません。
周りを見ると、普通に行動している人ばかりに見えて、自分だけが止まっているような気がしてしまう。
そして気づけば、「自分は怠けているのではないか」「意志が弱いのではないか」と、理由を自分の内側に押し込めてしまう。
でもまず伝えたいのは、動けない状態そのものが異常でも失敗でもないということです。
行動が止まるのには、必ずそれなりの理由があります。
それは性格の欠陥や努力不足という単純な話ではありません。
むしろ、多くの人が無自覚のうちに抱えている「思考のクセ」が、ブレーキとして働いていることが多いのです。
悩みの正体を分解する：行動を止めるいくつかの思考
行動できないとき、頭の中では何が起きているのでしょうか。
よく見られるのは、次のような思考の重なりです。
ひとつは、「ちゃんとやらなければ意味がない」という考え。
中途半端に始めるくらいなら、完璧な形が見えるまで動かない方がいい。
そう思うほど、スタートの条件は厳しくなっていきます。
もうひとつは、「結果が出なかったらどうしよう」という不安。
失敗する未来を想像すると、行動そのものがリスクの塊に見えてしまう。
動かない限り、少なくとも失敗はしない。
そうやって、無意識のうちに“現状維持”を選んでしまいます。
さらに、「自分がやる意味はあるのか」「今さら始めても遅いのでは」という比較の思考もあります。
他人の進み具合や完成形を見ていると、自分の一歩があまりにも小さく感じられてしまう。
これらはどれも、真面目に考えているからこそ生まれる思考です。
怠けているのではなく、考えすぎて立ち止まっている状態に近いと言えます。
考え方・視点の整理：白黒をつけない判断軸
行動できない状態から抜け出すために、「考え方を変えよう」とすると、余計に苦しくなることがあります。
前向きになろう、ポジティブに考えよう、と自分を叱咤しても、エンジンがかからないまま疲れてしまう。
ここで役に立つのは、答えを出すことではなく、判断の軸を少しだけずらすことです。
たとえば、「成功するか失敗するか」ではなく、
「これは試しなのか、本番なのか」という軸で考えてみる。
多くの行動は、本当は“試し”であっていいはずなのに、最初から本番扱いしてしまうことで重くなっています。
あるいは、「やるか、やらないか」ではなく、
「どこまでなら今の自分でも触れそうか」という見方。
全部やる必要はなく、触るだけ、覗くだけ、名前を書くところまで、でもいい。
行動を“意志の問題”として扱うと、どうしても自分を追い込んでしまいます。
でも実際には、行動は設計の問題であることも多いのです。
一般化された具体例：途中で止まっている人の話
たとえば、何かを学び直そうとしている人の話を考えてみます。
教材を買い、環境も整えたのに、最初のページで止まってしまう。
本人は「やる気が出ない」と感じているけれど、実際にはこういう状態かもしれません。
・この先、どれくらい時間がかかるのか分からない
・途中で挫折したら、自分を否定する材料になりそう
・どこまで理解すれば“やった”と言えるのか基準が曖昧
こうした不安が積み重なると、手を伸ばすだけで緊張してしまう。
結果として、何も始めていないように見えて、頭の中ではずっと考え続けている。
別の例では、誰かに連絡を取ろうとして文章を書きかけて止まる人もいます。
送る内容が失礼じゃないか、重くならないか、変に思われないか。
何度も推敲するうちに、送らない選択が一番安全に見えてくる。
どちらも「途中」です。
失敗しているわけでも、逃げているわけでもありません。
ただ、ブレーキが強くかかっている状態なだけです。
まとめ：行動は1mmだけでいい
行動できないとき、無理に大きく動こうとしなくて大丈夫です。
前向きな気持ちを作る必要もありません。
大切なのは、「やる気が出たら動く」という順番を手放すこと。
気持ちが整わなくても、1mmだけ動く余地はどこかにあります。
ファイルを開くだけ
道具を机に出すだけ
検索窓に言葉を打つだけ
それは達成感のための行動ではなく、状況を少しだけ動かすための行動です。
その小さなズレが、結果的に流れを変えていくことがあります。
動けない自分を直そうとしなくていい。
ただ、「今、どんな思考がブレーキになっているのか」を静かに眺めてみる。
そこから、ほんのわずかな余白を見つけられたら、それで十分です。
行動は、気合ではなく、隙間から始まるものだから。
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