不安と共存しながら働くという選択

はじめに：不安が消えないまま、今日も仕事をしている人へ

仕事を続けているけれど、不安がずっとそばにある。
何か問題が起きているわけではないのに、安心しきれない。
「この状態で働き続けていていいのだろうか」と、ふと考えてしまう。

そんな感覚を抱えている人は、決して少なくありません。
それでも日々の仕事はこなしているし、完全に止まっているわけでもない。
だからこそ、「不安がある自分は、どこか間違っているのでは」と感じてしまうこともあるでしょう。

でもまず伝えたいのは、不安を抱えたまま働いている状態は、とても自然だということです。
不安が消えないからといって、選択を誤っているわけでも、向いていないわけでもありません。

ここでは、「不安をなくしてから働く」という発想ではなく、
「不安と共存しながら働く」という選択について、静かに整理していきます。

不安を感じると、人はそれを問題として扱いがちです。
「早く解消しなければ」「この状態はよくない」と考えてしまう。

でも、不安の多くは、何かが壊れているサインではありません。
むしろ、状況を理解しようとする過程で自然に生まれる反応です。

特に、先が見えにくい仕事や、判断を一人で背負う環境では、不安は生まれやすくなります。
収入、評価、将来像。
どれも確定しない中で考え続けていれば、不安が出てくるのは当然です。

それを「性格の弱さ」や「努力不足」に結びつけてしまうと、
不安そのものに加えて、自分を責める負担まで背負うことになります。

不安は、あなたがダメだからあるのではありません。
「今の状況をちゃんと受け止めている」からこそ、出てきている感覚でもあります。

多くの人は、
「安心できる状態になったら、本気で取り組もう」
「不安がなくなれば、もっと集中できるはず」
と考えます。

でも現実には、不安が完全に消える瞬間はなかなか訪れません。
そこで一つの選択肢として、
不安があることを前提に、働き方を組み立てる
という視点があります。

これは、不安に慣れろ、という話ではありません。
不安を無視するのでも、押し殺すのでもない。

判断軸としては、
・この不安は、日常を壊すほど強いか
・それとも、揺れながらも手は動いているか

この違いを見極めることです。

不安がある状態でも、
・生活が回っている
・最低限の判断ができている
・回復する余地が残っている

そうであれば、「共存できている状態」と言えるかもしれません。

不安をゼロにするより、
不安があっても壊れない形を探す。
それも一つの、現実的な選択です。

ある人は、仕事を続けながら、ずっと不安を感じていました。
何年経っても、「これでいい」と思える感覚が来ない。
安心できない自分を、どこかおかしいと感じていたそうです。

最初は、不安をなくそうとしました。
環境を変えたり、働き方を見直したり。
一時的に楽になることはあっても、不安は形を変えて戻ってきました。

そこで、この人は考え方を変えました。
不安をなくすのではなく、
・不安が強い日は、大きな決断をしない
・不安が弱い時間帯に、作業を進める
・不安を感じた日は、それを記録するだけ

不安は今もあるそうです。
でも、「不安がある＝止まらなければならない」という考えは薄れました。

不安と並びながらでも、仕事は続けられた。
その事実が、少しずつ自信の代わりになっていったと言います。

不安と共存しながら働くという選択は、
妥協でも、逃げでもありません。
現実を見据えた、静かな選び方です。

不安を消そうとしなくていい。
前向きな意味づけをしなくてもいい。

できることは、1mmで十分です。
・今日は不安があると認める
・判断を一つ保留にする
・不安を感じながらも、手を動かした事実を確認する

それだけでも、仕事は途切れていません。

不安は、なくなったら終わるものではなく、
付き合い方を少しずつ覚えていくものなのかもしれません。

この文章が、
「不安があっても、働き続けていい」
そう思える余白を残せたなら、それで十分です。

このテーマについては、こちらで整理しています